東京教育学院の前身「帝国綜合学院」創立当時の日本教育制度は, 1886年( 明治19 ) に制定公布された学校令と, 1890年( 明治23 )に発布された教育勅語を教育の基本理念としたものでしたが, それは帝国大学( 現東京大学 )を頂点とする高級官僚ならびに技術者養成を主目的とした富裕階層の学校教育で, 向学心に燃える一般青少年にとってはまことに狭き門でした。
創立者 故中西敬爾は 「 教育は平等でなければならない 」 との自由と平等に基づく一般大衆への教育の普及 を目指し1872年 ( 明治5 )公布の学制, 国民皆学・教育の機会均等の原則 ・ 理念に帰るべしとして, 先ず最初に通信教育指導として開講したのがわが国初の「法律学講座」でした。当時は学問において法科万能の時代で, 多くの受講生を指導教育することとなりました。 そして, 次に開講したのが, 貧しく学問することの出来なかった者に対しての 「中等講義」で, 当時は義務教育小学校修了後の旧制における中学校への進学は, 実に僅か18%余であったのでした。そのためこれ又多くの受講生を迎えて指導を行ったのであります。その後は種々の要望に応えて, 次々と 人文・社会・国文・理工( 科学 ),芸術等々の教育講座を多数開講して指導を行い, このことは, わが国における唯一の綜合制 通信教育機関として, 広く一般大衆への教育普及に及ぼした影響は実に大でありました。また, 当時において向学心に燃える朝鮮・台湾の受講生も多く, その者達が本学院で学んだ知識・技能は, その後の彼らに大きな力となったことは確実であります。
本学院は, 日本の戦中・戦後の苦難の歴史を乗り越えて, 敗戦後は, 新憲法・教育基本法制定による教育諸制度改革, 六・三・三・四制の学校制度と9ヵ年の義務教育の採用を基に, 本学院では建学の理念を更に発展させて, 敗戦の中より復興の第一は教育にあるとして各講座の編成を一般教養部門・専門教育部門・職業教育部門とに分けて指導を行いました。特に戦後の復興期に必要とされた専門・職業教育部門における機械工学・工業機械科(機械製図・設計, 工作機械 )部門, ビジネス関係部門等での人材養成における教育では実に二百数十万人にも及ぶ修了生を世におくりだしたのであります。
日本の高度経済成長期には, 本学院の知識・学力向上の講座に加えて, 趣味教養技能における硬筆ペン習字部門 ( 東京教育学院 書法院 ) において, 毛筆に変わって, 戦前より使用してきたつけペンに変わる新しい筆記具 ボールペン による初の 「 ボールペン習字 」 〈 JBS 〉 を開講させて, 160余万人をも美しい文字を書ける者として修了させて, 日本の書の歴史に新たな1ページを加えたといえるものでした。そして筆記具硬筆ペンの種類も多様化したために, 講座名を 『 ペン字手習い ボールペン習字 』 と改めました。現在はネット社会となり情報機器が多く使用されて, 文字を書くことが少なくなっていることから, 字を美しく書く事への努力を怠りがちです。しかし, 人間社会において, 「話すこと」と「書くこと」がなくなることは絶対に有りません。そしてどのような社会になっても, 書かれた文字によって書く人の知性・教養・品性等々が判断されることには変わりがありません。今日のスマホ異常使用の中においても, 本学院は『ボールペン習字』の指導を強力に行っています。
一方, 創立以来戦前より継続して指導を行ってきた本学院の義務教育後の教育, また資格検定による合格指導等においては創立87年にして修了生が140余万人を越えました 。日本における, 中学の義務教育後の高等学校教育においては, 戦後70年にして全中学生が高校に進学する時代となって, 現在義務教育化が進行しています。又, 更に大学への進学率も56%を越え, 日本は正に高学歴社会となりました。しかし, 日本は人生100年の高齢社会を迎えて, 一億総活躍時代, 今こそ 「学び方改革」 「働き方改革」が必要となりました。若い時での学習だけではなく生涯に渡っての学習が必要な時代となったのです。
今日, 科学技術の進歩によって情報・I T社会となり, 社会のテンポは急速度化し, 国際化・少子高年齢が進行し, その他 地球上におけるさまざまな問題, 資源・エネルギー, 核, 食糧・人口・生命・宗教, 自然気象変動・宇宙等々, 今を生きる人間としてこれらについて生涯, 学習を行ってゆかなければなりません。
この生涯学習に最も適しているのが本学院が行う 通信教育方式 による 学習 であります。この方法ですと, 生まれてから死の直前までの全生涯に渡っての学習が可能となります。
今こそ, 本学院のこれまでの永い経験と実績, そして永い歴史と伝統をもとに, 各種講座において全ての人々の生涯にわたって対応する的確なる学習指導を強力に行ってゆきます。これはもうすでに現在も高い効果を上げています。
学院では, これらを地球現世人類21世紀での文明の問題として,正しく前後中等教育の視点からこれらを捉え, 科学・社会・時事問題等々として指導し, 又, 国際化の中で日本の歴史・伝統での連続性を大事にしながら, 本学建学の 「自由と平等」の理念に立脚した新しい時代の日本に貢献できる人材の育成に向けて, 更なる教育指導を強力に展開して行く所存であります。